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1995年 カラチ行 その2

 日本で反戦運動をやっている人達の声が今一つ心に響いてこなかったり、ベトナムやらパレスチナやらで戦場をくぐり抜けてきた人達が反戦・非戦の声を大にしないのはどうしてなのか、と思ってきたが、今回ようやく判ったような気がするよ。

 アブドゥルに手配してもらった切符を持ってラワルピンディ駅に着いたのは朝7時半。首都に一番近い駅ではあるけれど石造りのレトロな小さな駅だ。イギリス統治時代に造られたものだとは容易に推測出来る。駅独特の喧騒はあるけれど平和だな~。今俺が持っているのは地獄への片道切符。笑っちゃうよ。いや~笑うしかない。この街で大人しくしていたので、体調は少し回復した。ホームに出ると丁度ラホール行が出ていった。インドと同じ形の車両だ。窓に鉄格子かはめてある。窓から人とか動物が入らないないようにするためだろうけれど、動く牢屋にしか見えない。この辺りはパキスタンもインドも一緒だな。まあ元々は同じ国だし。大英帝国の植民地政策で良かったことがあるとすれば、鉄道網を張り巡らしたことだろう。特にインドは鉄道大国な訳だし、ここパキスタンでも十分にその恩恵を受けている訳なんで。
 さてさて俺の列車が入ってきた。ペシャワール発カラチ=キャントメント行き急行列車「8DN」。昨日の夜にペシャワールを出て2泊3日でカラチへ向かう。ペシャワールか。行ってみたかったな。アフガニスタンがやばいことになってなけりゃ、ペシャワール経由で国境の山を越えたのに。英雄マスード将軍も最近押され気味だからな。アフガンの統一はいつになることやら。
 2等座席だが、こりゃきついな。木の椅子じゃないか。線路幅が大きいので車両幅も大きく、通路を挟んで3人がけ向かい合わせの六人用コンパートメントと一人がけの向かい座席が一区画。自分は運良く一人がけの進行方向が割り当てられていたが、椅子は公園の木のベンチを一人用にしたようなもので背もたれも木。僅かに頭の部分だけ薄いマットだが、頭当ての意味を成してない。窓は鉄格子付き。ちっちぇえ窓だ。事故が起こったら逃げ場が無い。こりゃ棺おけだな!この車両で26時間の旅行だってか?8時11分、そろりそろりと出発。うげー。むちゃブルーだ。鉄道旅行でこんなに気が重いのは初めてだぜ!
 車内は満席だ。二人の車掌が検札に来た。白い民族衣装で格好が良い。乗客名簿と切符に書いてある俺の名前を照合している。その後来たのが武装警察。荷物検査だ。全く嫌になる。こいつら小銃を持ってやがるよ。日本で銃と言ったら拳銃だが、こっちではライフルだ。そんなにヤバイのか。ギルギットからのバスにも武警は乗り込んでいて、そいつも小銃を持っていた。向こうはまだ判るんだよ。インドと領有権争いをしているカシミールだからな。こっちはこの国一の大幹線の急行列車だぜ。

 平和な草原の風景を硬い椅子の上でボーっと眺めながら、快調に飛ばす列車の旅を「楽しむ」。15時半。ラホール着。さすがにピンディとは比べ物にならない位の大都会だよ。トンガリ屋根のデカい駅舎はイギリスが造ったやつだが、さすがに趣があるな。ホームのモノ売りは豊富だ。チャイ、カレー、ジュース、新聞、本、女性服、おもちゃetc。
 チャイ売りが車内に乗り込んできた。1杯注文する。ホームからの出前だ。30分の停車時間で7両を後ろに増結した。大量に人が乗り込んできた。元々席が無いところに人が押し寄せてきたんで、おぞましい空間になった。ま、運命共同体は一人でも多い方がいいけどな。17両編成のパキスタン人民列車。カラチへの旅はここからが本番だ。。

 夕陽が大地に沈む。空が真っ赤だ。日本から来ていきなりこんな風景を見せつけられたら感動するんだろうけれど、自分は今更何とも思わん。これまでもシルクロードやらで散々見せつけられてきたからな。これってあんまり良いことでは無いような気もするけど。敢えて思うとすれば、明日も太陽見られるんだろうか、ということかしら。

 座席無しの乗客がそこら中に座り込むので車内が大変なことになっている。荷物は網棚にくくりつけてあるが、こんなの気休めにしかならないって。バックパックだから、切られたらおしまいだし。さて夜に突入だ。車内の灯りが消えた。寝ろ、とのことだろうが、尻が痛くて寝られるものじゃあない。尻の痛さをごまかす為には体勢を変えるんだけど、これとてまた別の所が痛むだけだ。暑いので窓は開けっ放し。列車の轟音が響くが慣れてしまえば聞こえなくなる。車内は人で充満しているけど誰一人として喋るヤツはいない。大声で喋り好きのパキ人が無言の集団となっちまってるから、このカオスも不気味な空間になっている。おいおいこの暗闇で俺の方を見るんじゃねえよ。色黒の顔にギロリとしたその白い眼は目につくんだって。

 座席車にしては良く寝られたほうかな。やっぱり何処かで疲れてたんだろうか。ハイダラバードを出た。この辺りは武装グループの本拠地になっているシンド州のど真ん中だ。すぐにインダス河を渡った。河幅も広く水量も多い。見た感じは平和な風景なんだが、インダス文明の総本山モヘンジョダロへは武警の護衛が無いと行かれないんだから、やっぱりやばいんだろう。

 懸念された襲撃はなく、なんとかカラチに辿りつきそうだ。
 10時丁度、カラチ=キャントメント駅着。無事に着いた安心感で少し気が緩んだ。が、この駅は地獄の一丁目だった。まさか実際にあんなものを見せつけられるとは、思わなかったっつうの。
(続く)
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プロフィール

Mr.Problem

Author:Mr.Problem
東京移住。
職業:雲のジュウザ
根本思想:世界人民大団結万歳(笑)
多少、あちこちに行ってましたが、。結婚してからはめっきり諸外国へ出ることが少なくなりました。せめて一年に一度くらいは海外には出たい。元パッカーの習性で旅行は旗持ちではなくほぼ個人旅行。基本的には今世界で起こっていることについて思うところや、今まで行った街の印象を徒然に書いていきます。
みなさんが世の中について考える何かの助けになれば。

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