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1995年 カラチ行 その3

 カラチ=キャントメント駅に降り立ったが、久しぶりに大都会に放り出された、という気分だぜ。そりゃそうだ。ここはパキスタン一の大都市だからね。
 圧倒的な車の量と人の波に包囲されるが、こんなのにめげたら旅行者をやってられねぇ。まずはベッドだ。夜行座席にしちゃ寝られたほうだが、それでも木の椅子にくくりつけられての旅行だから、疲れてないっていっちゃあウソになる。飛行機はあさっての深夜3時半発。ヤバイと言われるこの街でのサバイバル開始だ!

 何がやばいかって?
 政府のことを気に食わない集団がいて、この街の郊外で軍と「交戦」してるんだよ。ゲリラ戦をな。で、街中では爆弾テロがボコボコ起こってる。こないだもアメリカ人が巻き添え食って死んでるんだ。大体2~3週間に一回、この広い街のどこかで爆弾がボカンといっててね。この位の頻度だと遭わないっつっちゃあ遭わないが、頻繁と言っちゃあ頻繁と言えなくもない。お国の外務省も渡航自粛勧告を出している。まあ用があっても行くんじゃないよっていう位のカナリのレベルだな。この勧告の上は退避勧告になるからさ。武装勢力との協定では空港には手をつけない(テロの標的としない、攻撃をしない)ということになっているらしいが、そもそもそんな集団と結ぶ「協定」って何なんだ?ゲームじゃあるまいし。

 宿はすぐに見つかった。今までとは違い奮発して一泊600円程の宿。個室でシャワー付き。日本で言うところのビジネスホテルだな。

 それはカラチ2日目の午前中のことだったよ。

 起きて新聞でも買いに行こうと街に出た時だった。いきなり大音量の爆音が響いたんだ。とっさにテロだ、と思った。長期旅行をしていると神経は嫌でも研ぎ澄まされてくる。日本にいる時とは比べ物にならないくらい注意深く、また冷静になっているが、それでもこの爆音は強烈だった。後ろの方100m程のところから真っ黒い煙が上がっているじゃないか。その時、前方でも大音量の爆音が響いた。2連発か!人が走り出す。周りは騒然となった。前の方から頭が真っ赤な人が歩いてきた。流血だ。このままホテルに隠れた方が良いのだろうか。いや、こんなでは建物にいるから安全というものじゃあない。急に回りの商店がシャッターをバシャバシャ閉め出した。足が自然と前方に向いた。まだ警察は来ちゃあいないようだ。大勢の群集集まっているが、逆に危険じゃないのか?群集の方に行ってみると、とんでも無い光景を目にした。がれきからはみ出るように血だらけの人が倒れている。見たところ3人か。その内一人は首から上、左のひじから先が無い。少し離れたところに腕がちぎれて転がっている。頭は見当たらない。建物はごうごうと火を噴出している。今にも崩れそうだ。死人が出た。思わず目を背けるかと思ったが、逆に注視して目を離すことが出来ない。
 周りの音が聞こえなくなった。足が動かない。

 一人のパキ人が鬼の形相で俺を引っぱたいた。意識が戻った。殴られた痛みは感じなかった。胸倉をつかんで何かいっている。「Hey!My friend!Far away!」そうして俺を投げ出した。救急車のサイレンが聞こえた。やばい!

 その時また近くで轟音がした。3発目か。一目散に走り出した。逃げなくちゃいけねえ!


 これがテロというやつか。人の生き死にが一瞬で分かれた。もうすこし早く宿を出ていたら自分が転がっていたかもしれない。人間とはこんなにも簡単に物になるものなのか。そこにあるのはテロの是非、主義の是非じゃあない。生死分岐点が偶然に左右されるという理不尽であり、終わってしまえば、物になるという儚さだ。

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 決してテロという方法を肯定するものではないが、する方にもそれなりのもっともらしい理由があった。それがこの国の一部、それもかなりの範囲では熱烈に支持されている事実を目の前にして、どうして一介の旅行者が主義の是非や事の善悪を声高に叫ぶことが出来ようか。爆弾を抱えて自死する連中は、まず宗教と神という日本人には理解し得ない呪縛に対して肯定的に捉われており、併せて国家権力への戦闘方法として自爆テロが最も有効的な手段と信じられている(信仰と言ってもよい)となれば、外から反戦や善悪を語ったところで、全く意味を持たない。このあと私は好んでイスラム国家という異質な空間に身を寄せたが、この考えは今以て全く変わらない。

 この漠然とした、一方で強烈な印象は、翌年夏、ベトナムのダナンに於いても別の形で再度認識させられる事になった。
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 その日はもう街に出るのが恐ろしかった。当たり前だ。酒で紛らわそうにも、この国は禁酒国で一般の旅行者では酒は手に入らない。勿論寝られるものでも無い。自然と煙草が増えた。紙巻で煙草酔いを経験したのは後にも先にもこの時だけだ。後で数えてみたら、6箱120本ほどを一日で吸っていた。
(続く)
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プロフィール

Mr.Problem

Author:Mr.Problem
東京移住。
職業:雲のジュウザ
根本思想:世界人民大団結万歳(笑)
多少、あちこちに行ってましたが、。結婚してからはめっきり諸外国へ出ることが少なくなりました。せめて一年に一度くらいは海外には出たい。元パッカーの習性で旅行は旗持ちではなくほぼ個人旅行。基本的には今世界で起こっていることについて思うところや、今まで行った街の印象を徒然に書いていきます。
みなさんが世の中について考える何かの助けになれば。

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