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T8次 13年越しの成都脱出

 来る11月に西蔵(チベット)行を実行するべく準備中である。昨年開通した青蔵鉄路を走破する為である。多くの日本人ツアー客が乗車するのは青海省の西寧から西蔵自治区の拉薩までの区間であるが、私が手配中なのは上海発拉薩行T164次。沿海から南京、鄭州、西安、蘭州、西寧を経由して拉薩へ向かう。当然の事ながらこの青蔵鉄路は今回の旅の一大イベントであるし、楽しみの一つには間違い無い。が、私にとっては青蔵鉄路以上に是が非でも乗りたかった列車に乗車する機会を今回得る事が出来た。成都発北京西行のT8次である。この旅行は私にとっての中国旅行の区切りとなる事には間違い無く、しばらく訪れる事も無いだろう。旅の最後にT8次乗車計画を立てたのは、私なりの中国鉄道旅行の区切りとする為である。

 以前成都を訪れたのは13年前の94年。雲南省の麗江から攀枝花を経て成都に入ってきた。新しい街に来てまずやる事は次の街への交通手段の手配である。成都という街を地図上で見てもらえれば判るが、場所は四川盆地の中央に位置する。四川盆地そのものは肥沃な土地で中国の穀倉地帯であるのだが、非常に険しい山々に囲まれている。つまり、何処に行くにも非常に不便なのだ。私は雲南の方から来たので、ここ成都から外に出るルートは二つあった。すなわち、陽平関、蜀の桟道を抜けて宝鶏から西安へ抜けるルート、つまり諸葛孔明の北伐ルートと、重慶から白帝城を見、三峡を抜けて武漢へ抜けるルート、つまり劉備入蜀のルートである。要は西安方面へ向かう列車に乗るか重慶方面へ向かう列車に乗るかの選択だ。

 当時の成都は「一度入ったら抜け出せない街」と言われていた。居心地が良いのではない。鉄道の切符が全く取れないのである。飛行機も各方面一日一本とかで、状況は同じ。値段も高いし危険である。かろうじて重慶へは成都発重慶行という比較的取れやすいだろうと思われる列車が一日二本走っていたので、こちらに向かう方が可能大きそう。と言っても可能性の話である。

 首都北京と四川省会成都を結ぶ列車は、下りが7次(7列車)、上りが8次(8列車)。飛行機の次に早い交通手段がこの列車だ。7次が首都から地方へ向かう帰省列車であるのなら、8次は上京列車だ。かつての日本で東京から九州、上野から東北を結ぶ列車が、それぞれの地方都市では花形列車であったように、ここ四川でも看板列車は8次である。都会から田舎へ向かう列車と田舎から都会へ向かう列車は、その持つ意味合いが全く違う。上京列車とは一攫千金を狙う希望に溢れた者たちが乗る列車である。ここ四川は中国全土への民工(出稼ぎ労働者)の供給地である。であるならば、8次に乗る乗客というのは家族も夢も背負った者達が乗車する列車なのだ。
 人が動くのなら、人治国家中国では当然のように利権とコネがモノをいう。当時この列車には硬臥が5両(定員330名)つながっていたが、駅での販売枚数は予め決められており、それが何と5枚であった。他の325の寝台切符は駅で販売される前に、闇ルートで売りさばかれてしまうのである。当然普通のルートでは切符は手に入らない。だから、硬臥切符の欲しい者たちは、自分の持つあらゆるネットワークを利用して寝台を押さえる事に挑戦するが、手に入れられない事の方が多い。軟臥は高価で切符が買えない。それでもどうしても行かなくてはいけない者達は、硬座で32時間の苦行に耐えながら北京を目指すのである。
 私も8次の硬臥切符を手に入れようと試したが、旅行社の者でさえ「私達でも手に入れるのは無理です」と言う始末であった。どうしても取れなかった。結果的にこの時私は重慶を目指すのであるが、三峡ダムがその後に建造された事を考えると、重慶行を選択したのは正解だったのだけれど(この時も一週間待ちをしたが二本ある重慶行は取れず、広西自治区南寧行列車に乗って重慶に向かった)。

 このような過去を思う時、今回8次(現T8次)に乗る機会を得たことに感慨を覚えない筈は無い。時代が変わったのと、当時トライして乗車出来なかった列車に今回乗るチャンスを得たことを喜ばずしてどうしようか。当時32時間かかった8次は、現在26時間で成都と北京を結ぶ。今も四川省の看板列車であることには変わりが無い。
 いわく私の中国鉄道旅行の区切りとなるのにこれほど合うであろう列車は他に無いのである。

仕事、仕事、仕事、家でも仕事(爆)PageTop「蒙古枯草大草原」 ~「北京~モスクワ国際連絡 第3/4列車」

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Mr.Problem

Author:Mr.Problem
東京移住。
職業:雲のジュウザ
根本思想:世界人民大団結万歳(笑)
多少、あちこちに行ってましたが、。結婚してからはめっきり諸外国へ出ることが少なくなりました。せめて一年に一度くらいは海外には出たい。元パッカーの習性で旅行は旗持ちではなくほぼ個人旅行。基本的には今世界で起こっていることについて思うところや、今まで行った街の印象を徒然に書いていきます。
みなさんが世の中について考える何かの助けになれば。

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