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イタリアの老兵

 ギリシアのパトラスから船でイタリアに渡った僕は、ブリンディシに到着後、そのまま中部イタリアのラヴェンナへ向かおうとしていた。世界史の教科書で見た東ローマ帝国の皇帝のモザイク画がその街にあったからだ。
 20時58分発ミラノ・チェントラーレ行夜行急行。この列車はイタリアの「かかと」の街レッチェ発。早朝4時30分にラヴェンナへの乗り換え駅リミニに着く。季節からかそれとも普段からそうなのかは分からないけれど、二等座席のコンパートメントはどれもガラガラだった。見つけた空っぽのコンパートメントに陣取った瞬間、列車は発車した。

何処の街かはわからないけれど、停車した駅で一人の老人が僕の部屋に入ってきた。年の頃は見た感じ70歳くらい。夜行に一人で乗るとはお元気な方だ。

「ボンジョルノ」
「チャオ」

 夜更けだけれど「こんばんは」を知らないので「こんにちは」で挨拶した。最初はイタリア語で始まったが、イタリア人には珍しく(とあとで知った)、英語がペラペラだった。
「何処から来た」
「日本です」
日本人と分かった瞬間、彼は饒舌になった。
「バンビーノ」
おい、俺は「少年」かよ。そりゃあんたみたいな人から見たらガキかもしれないけどさ。
「日本人は私の友人だ」
それはありがとうございます。
「日本人は勇敢だった」
はい?
「かつて我々は共に戦った」
?...ひょっとして第二次大戦の話ですか?
「我々は先に降伏したが君達は最後まで戦った」
戦い続けたことに否定的な意見の方が多いんですけど。
「君の祖先も(確かに祖先と言った)我々と戦っただろう」
確か南方に行ったと聞いています。
「戦争は絶対にしたら駄目だ。友邦ドイツはその後我々を攻撃した。敵も味方も殺しあうことに変わりは無い」
おっしゃる通りです...。
「ただ我々にとっては青春だった。大事な時間を君達の祖先と共に過ごした。青春という時間を誇りに思いたいという気持ちもある。それは私が年をとったからかもしれないが。わかるか?バンビーノ」
.....。
「私の国と君の国は戦争で敗れた。歴史の中で悪にもなった。しかしそのことが、私や君の祖先が命をかけた時間を否定するものになってしまうとしたら哀しいではないか」
.....。
「君の祖先と私は友人だ。だから君は私の孫も同然だ。話が出来て嬉しかったよ」

僕は早朝にリミニで降りた。彼はぐっすりと眠ったままだった。

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Mr.Problem

Author:Mr.Problem
東京移住。
職業:雲のジュウザ
根本思想:世界人民大団結万歳(笑)
多少、あちこちに行ってましたが、。結婚してからはめっきり諸外国へ出ることが少なくなりました。せめて一年に一度くらいは海外には出たい。元パッカーの習性で旅行は旗持ちではなくほぼ個人旅行。基本的には今世界で起こっていることについて思うところや、今まで行った街の印象を徒然に書いていきます。
みなさんが世の中について考える何かの助けになれば。

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