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「私の志集」

 夜の九時過ぎに新宿大ガードから西口方向に行くのを普段としている人なら、丸ノ内線への降り口を少し進んだ所の柱に一人の女性が立っているのをご存知だろう。そう、「私の志集」のプラカードを首から下げているあの女性である。

 ご存知無い方にもう少し詳しく書くと、今でこそ黒いオーバーコートを着ているが、普段は白いブラウスに濃い色のスカート、今時珍しく髪は染めているようでなく黒色で、目鼻立ちが整っているほっそりとした人だ。年の頃は私より少し上くらいかと思っていたのだが、40の半ばを過ぎているらしい。

 この人、かなりの有名な人で、と言ってマスコミとかに出るように有名なのではなく、その見立てとはあまりにも場違いな場所、場違いな時間にいつも同じ所に立っているのである。当然通りがかりの人からは奇異な目で見られるが、ご本人は全くその目を気にするようでもない。いつも少し前の辺りを凝視しているので、見方によっては気味が悪くもある。
 東京に来てしばらく経った頃、この女性がいつも同じ場所に立っているのに気付いた。

 気付かない方がおかしい。

 出ているオーラは昭和のもので、服装も今時無いだろうという格好。この辺りは物売りも見かけるけど、売っているのが「志集」ときている。勿論詩集である。いつも見るけれども買っている客を見た事がない。それ以前に近寄るのに勇気がいる雰囲気が満開なので、一冊くらい買ってみようかと思うのだけれど、今ひとつ声をかけるきっかけが掴めない、それ程に街の雰囲気とは場違いな人なのである。
 私と同じように気になっている人はいるようで、調べてみるとこの人について書かれた文章が出てくる出てくる。詳細は控えるけれども、立ち続けてこの道25年だか26年だかの人らしい。夫の意思を継いでここに立ち続けているというのだからそれなりの事情がありそうだが、余計な詮索はしない。

 新宿という街がそういう街だ。若い人達が集まり新しいビルやら店やらが立ってくるのだけれど、何処かに古い空気が流れている。大ガード際の「思い出横町」がその最たるものだし、東口の繁華街も少し奥に入ると昔のままの食堂が残っていて、煙草の煙の中でご飯をかきこむ人達の姿が見えるのだ。渋谷の路地裏の古い飲食店街とは違う、どちらかと言えば上野の場末に通ずる景色である。少し偏った見方をするのなら上野も新宿も別の地域から人が集まる所で渋谷にはそれが無い。だから洗練さの裏側に古い雰囲気を見るのかもしれぬ。

 西口ヨドバシカメラ前のバス発着場は、昼夜を問わずあちこちへのバスが発着している。新南口が主に東北、上越に向かうバスが出るのに対し、こちらは主に信州、東海、関西、果ては福岡まで。西口繁華街のネオンの脇にあるこのバス乗り場も、何処となく雑然とした雰囲気で、時代が止まった感を受けるのは私だけか。

プロフィール

Mr.Problem

Author:Mr.Problem
東京移住。
職業:雲のジュウザ
根本思想:世界人民大団結万歳(笑)
多少、あちこちに行ってましたが、。結婚してからはめっきり諸外国へ出ることが少なくなりました。せめて一年に一度くらいは海外には出たい。元パッカーの習性で旅行は旗持ちではなくほぼ個人旅行。基本的には今世界で起こっていることについて思うところや、今まで行った街の印象を徒然に書いていきます。
みなさんが世の中について考える何かの助けになれば。

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