神楽坂の赤城神社の脇から下る赤城坂は、神楽坂界隈の賑やかさとは別世界にあった。人気のエリアも一歩外れればこの静けさだ。坂の入口にあるイタリア料理屋はそこそこ評判の店なのだが、土曜の夜にも関わらず空席が見て取れた。
妻が関西から出てきた友人達と夕飯を食べに行ってしまったので、一人放り出された自由な時間を何処で過ごすか考えた。
牛込界隈から見える神田川の向こう、小石川台地の家々に光が灯る様を漱石はその小説に書いているが、現代の赤城坂からはそのような景色など望むべくもない。手前の低いビル群が邪魔をして、神田川を覆う高速道路でさえ見るのも困難なくらいだ。
とりあえず夕飯を食べようと思い、江戸川橋まで歩みをはじめた。夏祭りだろうか。祭囃子が何処からかわずかに聞こえるが、何処でやっているかはわからない。商店街を抜け、江戸川橋の食堂をくぐった。
まっすぐ家に帰るのには時間が早いように思った。上野広小路に出るバスはまだまだ走っている時間で、暇つぶしに秋葉原くんだりまで行こうかと考えたけれども、あまり健康的じゃあない。新宿駅行のバスは待たずに乗れるけれど、出たところで何があるわけでもない。西に歩いて早稲田鶴巻町から目白台に上がるか、神田川沿いに少し進んで椿山荘を突き抜けるかすれば雑司が谷はすぐそこだ。まあどの道を通るにしても家までは30分程度だろう。食事後の運動には丁度良いので、このまま歩いて帰ることにした。
神田川沿いをてくてく歩き、早稲田の電停に出る小さな交差点を北に上がって目白台に出た。上りきった所のすぐ脇は超大物元総理大臣の旧邸で、今はかの有名な娘さんが住んでいる。去年の選挙でただの人になってからは、そういえば見る事もなくなった。
蒸し暑さが少し落ち着いた夜、一息つく散歩路となった。
●江戸川橋
白61系統(新宿駅〜練馬車庫 / 練馬駅)、上58系統(上野松坂屋〜早稲田)、上69系統(上野公園〜小滝橋車庫)、飯64系統(小滝橋車庫〜九段下)にて「江戸川橋」下車。
何がある訳ではないですが、昔ながらの商店街と、近くには椿山荘の庭園とか。案外に神楽坂まではすぐなので、我が家から神楽坂に出る時はバスをここで降りて歩きます。