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 軽くなった本

 新書ブームです。
 つい10年程前は、岩波、中公、講談社で殆ど占められていた本屋の棚が、ありとあらゆる出版社の新書で色とりどりです。新書はある特定のテーマを掘り下げて世の中に提起する類の書物で、元々は大学の講義で収まっていた知識を大衆に開放する事を目的として刊行されたもののようです。私は講談社新書の一番後ろにある「刊行にあたって」という文を読むのが好きでして、これを読むと先人の意気込みを感じる事が出来、嬉しくなります。

 「教養は万人が身をもって養い創造すべきものであって、一部の専門家の占有物として、ただ一方的に人々の手もとに配布され伝達されうるものではありません。(後略)」
 
 前述のように本屋では新書が幅を利かせております。毎月あらゆるテーマであらゆる出版社から発刊され、ますます隆盛です。しかし、出てきた書物を見るとこれらの本が軽く感じられてしまうのです。理由はいくつかあります。

1)表題がパターン化している
 「どうして●●なのか」「●●なのは何故か」
 この手の疑問系表題が最近非常に多い。「さおだけ屋がつぶれないのは何故か」「女は男の何処を見ているか」
2)しかもこれら表題の内容がどうでもいいことである事が多い
3)内容が著者の日記風なものが多い

 教養の伝達が新書の目的とあれば、さおだけ屋で経済学を語り、何処を見ているかわからない女性を持ち出して心理学を語るのも一つの手段でしょう。しかし、裏をかえすとこのような身近な話題を表題に持ってくることが、現今とりあえず売れる本を作る最短の手段であり、またこのような内容を持ってこざるを得ない所に、読み手の質(現代人の質と置き換えてもよい)に問題がある事をあらわしているように思えるのです。確かにこれらの疑問形表題は一見とっつきやすそうですが、よく考えてみたら「考える必要」を最初から放棄させるような表題ではありませんか。最近出た「ピアノは何故黒いのか」という本を見て泣きたくなりました。黒でも白でも結構。だからどうしだんでしょう。ピアノの歴史とか著者がピアノを通じて知り合った人々とかを書いているらしいいんですけれど単にそれだけです。読んだ直後に内容を忘れていそうな気がします。暇つぶしに読むためだけの内容が多い。
 
 逆に新書の乱発行=トレンドで良くなったと思われる点は、ポリシーの伝達や評論が身近になった事です。本来ならハードカバーで出るような内容のものが新書で出ることにより、その主張を身近に得られる事が可能になりました。「美しい国へ」とか「国家の品格」など、中身の質はどうであれ主義主張を新書を使って世の中に提起しやすくなったのは、良い傾向だと思います。その分読者が書物に対する判断力、批評力を求められている訳ですけれども。

 まあ今時かつての岩波や講談社の表題が受けるとは思いませんが、この事は考える事を放棄した世の中を如実にあらわしているように思えてなりません。
 

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Mr.Problem

Author:Mr.Problem
東京移住。
職業:雲のジュウザ
根本思想:世界人民大団結万歳(笑)
多少、あちこちに行ってましたが、。結婚してからはめっきり諸外国へ出ることが少なくなりました。せめて一年に一度くらいは海外には出たい。元パッカーの習性で旅行は旗持ちではなくほぼ個人旅行。基本的には今世界で起こっていることについて思うところや、今まで行った街の印象を徒然に書いていきます。
みなさんが世の中について考える何かの助けになれば。

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